まずはこちらの記事をご覧ください。
参考記事1
ドバイでは、ドローンを使って雲にレーザー光線を照射し、雨を降らせようとしている。 これはちょうど牧場に散らばる牛を追い込んで集めるように、小さな水滴を強制的に集めて大きな水滴を作るような方法だ。(※以下省略)[原文:Dubai is coping with its 125-degree heat by using laser-beam-shooting drones to shock rainwater out of clouds] (翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)
参考記事2
水不足対策や砂漠化の防止に取り組む筑波大などのチームは26日までに、雲を成長させる効果がある「液体炭酸」という液体を上空でまく手法で、人工的に雨を降らせる実験に成功したと発表した。
2月に三宅島付近の上空で行った実験では、液体炭酸の散布から約1時間後に近隣の島で雨が降りだし、最大で1時間当たりの雨量が10ミリ程度になったという。
雲の中に液体の炭酸をまくと、蒸発する際に周りの温度を急激に下げるため、大量の氷の粒が発生する。できた氷の粒は周囲の水滴を取り込んで成長し、重くなって落ちるという仕組み。最初は氷だが、落ちる途中でとけて雨になる。
チームは航空機を使い、高度約2千メートルの雲の中で、1秒間に5~6グラム程度の液体炭酸を数分間ずつ、3~4回に分けてまいた。
人工雨には、ヨウ化銀などをまく方法もあるが、液体炭酸がより効率がよく、期待できる雨量も多いという。
※2012 6/26『人工雨降らせる実験成功 筑波大など』
今回は、『ドローンで雨を降らせる技術』についてお話ししていきたいと思います。
Contents
背景
まずは、このドローンで雨を降らせる技術を開発するに至った背景についてお話ししたいと思います。
このニュースが話題を呼ぶ発端となったのは、日本からはるか西にある国、アラブ首長国連邦(※以下UAE)です。
皆さんご存知の通り、UAEでは、年間の降雨量が平均100mm以下と非常に少なく、その土地柄農業をすることが非常に困難となっています。
農業活動ができないような環境下では、食料の80%以上を輸入しなくてはならず、その食糧自給率の低さから、今回のような降水量の問題が示唆されるような形となりました。
そこで解決策の緒となったのは『人工雨』です。
人工雨とは
人工降雨とは、人工的に雨を降らせる気象制御の一つ。降った雨は人工雨ともいう。雪を降らせる場合は人工降雪という。cloud seedingは「気象種まき」とも訳される。旱魃など水不足の解消、山火事消化、猛暑の抑制、あらかじめ雨を降らせてしまうことで特定の地域・日時を晴天にするといった目的で行われる。
この人工雨は空中で散布する必要があり、その際にドローンが使用されるという形式になっています。
UAEは過去数年の間に9つの人工降雨プロジェクトに投資しており、その費用は合計約1500万ドル(約16億4300万円)に上るそうです。
人工雨の仕組み
ここでは、人工雨の仕組みについて説明していきたいと思います。
雨の生成
雨は、熱帯地方では例外もあるが、通常は氷点下15℃以下の低温の雲の中で発生した氷晶が昇華核となって周囲の水蒸気を吸収して雪片となり、雲中を落下して成長しながら、暖候期には途中で溶けて雨粒となって降る。寒候期でも、気温が高いと溶けて雨になる。いずれにしても、雨を降らせるには雲の中に氷の粒を作る必要がある。その氷晶を作るのは空気中に浮かぶ微小な粒子で、主に海の波飛沫で吹き上げられた塩の核であり、他に陸上から生じた砂塵などの粒子もある。それらの周りに、雲の中の水蒸気が昇華と低温の影響で氷となって付き、初めに述べたように成長して雪片となるのである。
雨が生成されるためには、上記のように核になる粒子と低温の雲が必要になります。
実際、中程度発達した積雲や層積雲の上部では温度は0℃以下になっています。
しかし、その温度が氷点下15℃くらいになるまでは、過冷却というような状態にあり、水滴のまま雪片の形成に至らず、雨は降らないようになります。
そこへ、強制的に雪片を作るような物質を散布してやれば雨を降らせる可能性ができる仕組みになっています。
このような方法を俗に、クラウドシーディング(cloud seeding、雲の種まき)、あるいは単にシーディングというように呼ばれています。
使用される原料としては、ドライアイスやヨウ化銀が用いられます。
こういった原料を、飛行機から雲に散布し温度を下げます。
そして、ドライアイスやヨウ化銀の粒を核として氷晶を発生・成長させるような仕組みになっています。
従来この原料を飛行機やヘリコプター、ロケットで打ち上げるなどをして、空中散布いたします。
ドバイでの技術紹介
ここでは、ドバイの例をお話ししていきたいと思います。
冒頭でお伝えした通り、UAEは過去数年の間に9つの人工降雨プロジェクトに投資しています。
その大半が、先ほどお伝えしたような「クラウドシーディング」というヨウ化銀を空気中に散布することで、水滴を発達させる技術でした。
しかし一方、2021年3月にはUAEはイギリスのレディング大学と共同で開発したドローン技術の試験運用を検討しているとのこと。
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにある国立気象センターは、レーザー光線を照射するような新たな方法を考案しました。
内容としては、ドローンを用いて雲にレーザー光線を照射して帯電させることで、小さな水滴が集まって大きな水滴となり、それが雨となって落ちてくるというものです。
ドローンには電荷放出装置やセンサーが搭載されており、ドローンで雲を刺激するように地上のオペレーターによって遠隔操作されるような形式になっています。
ドローンを雲に向けて誘導したのち、雲に向けて電荷を放出します。
こうすることにより、雲の中の水滴に電荷が付着&帯電し、水滴同士が引き付け合うような仕組みになっています。
そして、雲の中の水滴が十分大きくなると、雨となって地上に降り注ぐのです。
今後の展望
ここでは、ドローンによる人工雨技術の今後についてお話ししていきたいと思います。
ドローンによる人工雨での最大の問題は、大きく二つあります。
一つ目は、意図せずに大規模な洪水が引き起こされる可能性がある点です。
現在の技術では、天候の規模を操作するようなテクノロジーが開発されていない状態にあります。
ここから、自然災害に対応するような処置で、二次災害が起こってしまうと本末転倒になってしまいます。
また、責任の所在も不安定になってしまうのでそうした内容が懸念材料になっています。
二つ目は、技術が民営化されてしまう点です。
技術の民営化が進んでしまうと、一般的に技術が普及し、誰もが利用できるようなサービスになる可能性が高いです。
そうなると、先ほどの内容とも重複するように、責任の所在が不安定になってしまうだけでなく、悪いように利用されてしまうような可能性も出てきてしまいます。
しかし、良い点もあり、気候危機による壊滅的な影響に対応できるという示唆もあります。
かの有名なビル・ゲイツ氏が担当している件では、太陽光を遮断する技術の開発を支援しているとのこと。
この技術は、大気中に人工の雲を形成して太陽光を遮ることで、地球を冷却しようというものです。
ビル・ゲイツ氏の住む、アメリカでも、そういった自然環境を要因とした災害が非常に増えています。
アメリカ西部では、80以上の山火事が発生し、社会に壊滅的な打撃を与えています。
ここでの成功事例は、例えばオーストラリアのような他の山火事でに被害に遭っている地域の問題にもあてはめられるので、今世界的に見てニーズのある内容と言えます。
最後に
いかがだったでしょうか。
今回は、『ドローンで雨を降らせる技術』についてドバイの事例を軸にお伝えいたしました。
この技術はまさに、これからの社会を支える最新技術と言えるでしょう。
これからも、ドローンに関するお役立ち情報を発信していきますので、ぜひご覧いただければと思います。
それではまた次回の記事でお会いしましょう。