今回は、現在注目されている『水中ドローン』についてお話しします。
まずその概要からお話しし、特徴、市場規模、活用事例、利点、についてご紹介していきます。
Contents
水中ドローンとは
まず初めに水中ドローンについてその概要を簡単にお話しいたします。
水中ドローンとは『水の中を潜水・潜航しながら撮影できる小型無人機』のことを指します。
操縦者(パイロット)は、主に船上や陸上から有線で遠隔操作し、リアルタイムでの撮影映像を確認しながら操縦できるんですね。
この水中ドローンですが、実はその歴史は古く海外ではROV(Remotely Operated Vehicle)と呼ばれていました。
しかし、空を飛ぶドローンが登場して以降、名前が被ってしまうため水中ドローン(Underwater Drone)と呼ばれるようになったようです。
水中ドローンが(Underwater Drone)と呼ばれる一方で、空のドローンは、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)と呼ばれています。
空撮や点検・測量・趣味・エンターテイメントなどで活用されているUAVと同様に、水中ドローンも水中撮影や水産業、点検、マリンレジャーなど様々な分野において革新をもたらしています。
現在では水中ドローンを扱うスクールも出てきているくらいホットな市場なので、この記事を通して少しでも知識を蓄えていただければ幸いです。
水中ドローンの特徴
次に水中ドローンの特徴についてお話ししていきたいと思います。
水中ドローンの特徴の一つ目は、機体操作が有線である点です。
理由は、水中という環境にあります。
水中にいおいては、水以外にも電波を妨害する要因が多くあり、地上では届く電波も伝わりにくいことがあります。
そのため、無人機且つ撮影などをする場合、確実に操作可能で高画質な映像を取得できる有線が利用されています。
これが、後ほど紹介するデメリットの一つにもなっているんですね。
また、操縦に関して言えば手動とオートマチックの二つを利用する水中ドローンも多くあります。
基本操縦としては、水中ドローンに取り付けられたカメラから得た映像を頼りに、操縦士(パイロット)が操作するのですが、機体の状態を安定させたり時には完全にプログラムやAIによる自動操縦もあるようですね。
これは、UAVにもみられる特徴と言えます。
みなさんがお持ちのドローンもGPS機能や気圧計を用いて自動ホバリングをする機体ですよね。
市場規模
※参考:インプレス総合研究所資料より
続いてそんな水中ドローンの現在の市場規模・今後の市場規模についてお話ししていきたいと思います。
上の写真からもおわかりいただけるように、近年、注目度が一気に高まってきた水中ドローンは2023年には国内だけでも38億に達する市場へ成長するとも言われています。
実際この後に紹介する水中ドローンの活用事例でもある通り、水中ドローンは撮影だけでなく点検や調査、水難救助など、あらゆる現場で活躍すると言われているためこの予想がなされています。
特に、地球の約7割を閉める海に対してはまだまだ研究できていない課題が山積みとのことで、それも相まってこの水中ドローンへの期待が高まっていると言われているんですね。
世界の中でも日本は、島国という性質からその周りを海洋に囲まれています。
そんな世界6位の排他的経済水域の面積を持つ海洋国家の日本ではありますが、ボトルネックとして国内の漁業や潜水業従事者が減少している現状があるんです。
現場事業のさらなる革新だけではなくて、そうした衰退気味の事業の活性化も可能にする『水中ドローン』に今後も期待したいところですね。
活用事例
さて続いて活用事例についてお話しいたします。
これまでの項目でいくつか水中ドローンが関わる事業についてお話ししましたが、ここではさらに広い視点で利用シーンをご紹介したいと思います。
ドローンの活動領域としては、大きく9個に分けられます。
それぞれ、『水中撮影』『調査』『点検』『作業サポート』『セキュリティー』『水難救助』『水産、漁業、養殖』『科学研究』『学術調査』があるようです。
中でも、インフラ点検や造船業、養殖業、水中エンタメではかなり事例が増えている段階です。
インフラ点検
インフラ点検の例としては、製鉄所の点検があり、水中の点検はだけでなく、水面に水中ドローンを浮かべカメラを上向きにすることで桟橋の裏側を撮影し、点検するなどもやっているようです。
造船業
造船業では、船底の点検を行っています。
船底の塗装剥がれだけなく、スラスターの状況など、水中に潜らないと確認できない場所を水中ドローンを使用することで点検が可能になるようです。
養殖業
養殖業では、生簀の網点検であったり、魚たちの状態確認などを行なっています。
人間では警戒され、ストレスを与えてしまうような場面でも、水中ドローンを用いることによって、円滑に対処できます。
水中エンタメ
水中エンタメでは主に水族館での利用が例に挙げられます。
ここでは先ほど紹介した養殖業と同じく、生簀や魚たちの観察から魚視点での映像を撮ることによって、ガラス越しではわからない生態系に触れることができます。
活用事例まとめ
以下、活用事例のまとめです。
参考
水中撮影 | エンターテイメント テレビ・各メディアでの水中映像の利用 ダイビング、ボーティング 釣り場の状況確認 |
調査 | 海底、護岸、防波堤部、湖水、河川、港湾 水中事故、保険 水質、養殖、生態系 核施設など危険地域の各種検査、異物検測 排水施設 生態調査や災害後の現場確認などに役立ちます 海底石油、海上プラットフォーム、海中ケーブル |
点検 | テトラポット、ダム施設、貯水槽、プール、浄化槽、タンク内、パイプラインやケーブルルート 電力取水管送水管、工業用水管路内点検調査 船(船底・船体・スクリュー)、ブイ 橋梁橋桁橋脚、海底ケーブル、定置網 |
作業サポート | 取排水管の撤去、敷設 海洋工事、護岸工事 離岸堤施工、浚渫工事、波防施設、海底マウンド施工状況調査 |
セキュリティー | ダイバー作業風景の撮影・監督 水中安全性の事前確認 水中建造物の構造確認 水中遠距離検査、危険品近距離検査 水中廃墟の捜査 船底、船側密輸品検査 水中証拠保全、記録 海上救助、捜査 水中作業、潜水士安全対策、ダイビング |
水難救助 | レスキュー、捜索 沈没船捜索および状況撮影調査 引き揚げサルベージ |
水産、漁業、養殖 | 生け簀や水族館、養殖網内での軽作業補助 カキやわかめなどの生育調査、確認 養殖場など、水中網などの定期点検 魚礁効果調査、海底生物採取、深海採泥 |
科学研究 | 水中環境の観測 水中生物の生態調査 海洋研究、調査、教育 氷下調査 |
学術調査 | 水中考古学、地質学調査、生態系観察 沈没船調査 |
※参考:ユーキャンロボットより
メリット・デメリット
これまでみてきたように、水中ドローンはあらゆる事業において活用されています。
そんな水中ドローンは、近年の革新的な技術の進歩により性能がとても高くなっています。
なんと、少し前の無人潜水艦よりも性能が良いそうですよ。
ここでは水中ドローンのメリット・デメリットについてご紹介したいと思います。
メリット
まず初めに水中ドローンのメリットを紹介します。
水中ドローンのメリットは大きく四つあります。
一つ目は、コストカットです。
今まで人と手で行わなければならなかった作業をロボットが代替する形になります。
リスクが伴ってしまう従来の水中調査よりも、人件費や保険などの観点から大幅コストカットが可能になるんですね。
そのため、今まで高価な検査だったものが安価になったため個人・中小企業も導入しやすいのもメリットの副産物と言えます。
二つ目は、人手不足の解消です。
コストカットと同様、ロボットが代替することによって人手不足を解消できます。
特に、特別な資格を求められることが多い潜水技術に関しては安定も難しいため、人手が足りていない状態にあります。
そんな中、ロボットが24時かんいつでも対応できる状態にあることは、企業にとって大変おきなメリットになるんですね。
三つ目は、安全性です。
無人機による活動は、人命のリスク低減にもつながります。
水中での人間の活動はどうしても限界があるものですが、有線の水中ドローンの場合半永久的に活動を持続できます。
大規模な現場での万が一の際でも、損傷があるのは機械なので人間の命に比べてリスクがかなり減らされるのは嬉しいことです。
四つ目は、安定した撮影です。
水中ドローンはその技術の進歩によってかなり安定した撮影を行うことができます。
人が手で撮るダイビング撮影よりも確実にブレが少なく安定した撮影ができることで、単なる映像の撮影以来だけではなく、点検や調査での正確性が増すというメリットもあります。
デメリット
続いてデメリットです。
水中ドローンの課題ともいえるデメリットは大きく三つあります。
一つ目は、機体操作が有線である点です。
前の項目でも説明しましたが、水中にいおいては水以外にも電波を妨害する要因が多くあるので確実に操作可能で高画質な映像を取得できる有線が利用されています。
しかし、有線が故に、活動範囲が狭まっていることもあり、入り組んだ現場では活動制限が邪魔をする場合もあります。
もちろん、有線のメリットもあるので、無線と有線の使い分けが大切になります。
二つ目は、環境リスクです。
水中ドローンは機械ですので、本来水中に無いような材質を用いています。
そのため、損傷などを起こしてしまった場合、特に水族館などでは魚たちに危害を加えてしまう可能性もあります。
科学進歩を目指す一方、環境問題を重視する近年の傾向に則るためにもこの課題は依然として残ると言えるでしょう。
三つ目は、メンテナンス技術の課題です。
環境リスクの原因となる損傷の部分で、水中ドローンが直面している課題にそのメンテナンス技術の向上があります。
水中というものが風化しやすい現場で活躍するドローンにはメンテナンスが欠かせません。
こうした背景を踏まえ、メーカーやサービス提供事業者が機体のメンテナンスだけでなく、保険のサポートを充実させ始めています。
メリット・デメリットまとめ
上記で説明したメリットとデメリットのまとめると以下のようになります。
あらゆる事業を支えられる革新的な技術である一方で、まだまだ伸び代も残っているのでこれからの活躍が楽しみですね。
メリット | デメリット |
コストカット | 基本操作が有線 |
人手不足の解消 | 環境へのリスク |
安全性 | メンテナンス技術の課題 |
安定した撮影 |
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は水中ドローンについてお話しいたしました。
普段紹介することの多いドローンと同様、市場がこれから拡大する事業なので注目しておくべき産業だと言えます。
これからもドローン事業を中心に記事を更新していきますので、ぜひそちらもご覧ください。
それではまた。